老齢動物の健康管理
2011-11-19 14:20:39
近年、平均寿命の延長に伴い老齢動物の健康管理が必要とされるケースが増えています。
動物でも高齢化に伴い人間のように癌や痴呆症などの病気が増加し、高齢の特に大型犬などでは人間の高齢者介護に近い負担を負うことも決して珍しくありません。
いくら平均寿命が延びたといっても人間の約4分の1くらいの寿命ですから、動物たちはいつの間にか飼い主の年齢を追い越して行き中年期、老年期を迎えます。いつまでたっても子供のような気がしますが確実に年老いてゆきます。そんな時動物たちは体調の変化を飼い主に訴えるようなことはしません。
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自然界であれば非捕食者でもある彼らにとって体調不良は即、命の存続にかかわる問題の為むしろ隠そうとさえします。最期の最期まで元気そうに見えることが多く、元気があり、食欲があるは健康のバロメーターにはならないと思った方が良いです。
「食欲がない」「元気がない」は最期の最期です。老齢動物の場合は特にその段階で来院されても、残念ですが治療も限られ効果も期待できないことが多いのです。
そこで症状が発現する前に体調の変化を知る健康診断が大変に重要になります。回数や検査の種類は動物の種類や健康状態により異なりますが、当院では大型犬で8歳、小型犬・猫で10歳をめどに定期的検査をお勧めしています。
どんなに頻繁に検査をしていてもすべての病気を事前に発見するのは不可能です。そこで重要なのはご自宅での健康チェックです。
1.体重測定
日常の変動が解ればいいので再現性があれば正確な数字でなくてもかまいません。元気そうに見えても変動があるときは要注意です。月に1回は計るように心がけましょう。
2.視診
舌や歯茎はピンク色か、体表に腫瘍はないか、毛づやは良いか、呼吸は安定しているか。
3.触診
目で見て発見できなくても体をくまなく触ることで腫瘍などを発見できることがあります。
このような日常の健康チェックと定期検査を併せることでかなりの病気を事前に把握し、健康に一日でも長生きさせることができると思います。
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白内障
2011-10-31 11:06:45
☆どんな病気?
目の構造はよくカメラにたとえられます。白内障は、「水晶体」(カメラではレンズにあたる部分)が”何らかの原因で白濁した状態”です。原因としては加齢、遺伝、糖尿病などがあります。
白内障はレベルごとに分類されています。
[全部読む]【初発白内障】水晶体の一部にわずかな濁りを生じたもの。
【未熟白内障】水晶体にはっきりと確認できる濁りが認められるが、視覚は失われていないもの。
【成熟白内障】水晶体が濃く白濁して視覚を消失したもの。
☆白内障になったら?
白内障になった犬に見られる行動としては、ものにぶつかる、つまずく、ボールを投げても気づかない、急にかみつくことが増えたなどがあります。
ただし白内障以外にも視覚障害を起こす眼疾患はあるため、このような状態に気付いたら早めに受診しましょう。
初期のうちであれば、進行を遅らせるために抗白内障薬の点眼が有効です。
進行した白内障ではヒトと同様の手術が適応となる場合があります。手術は眼科専門病院で実施します。
※犬、猫では中年齢以降に水晶体の中心部が青白く見える現象が起こります。これは「核硬化症」とよばれる老化現象の一つで、視力には影響がないものです。
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僧帽弁閉鎖不全症
2011-04-08 16:26:17
☆どんな病気?
犬、猫は人と同様、心臓に右心房・右心室、左心房・左心室の4つ部屋があります。心房と心室の間には血流を一方通行にするための弁があり、左心房と左心室の間で逆流を防いでいるのが僧帽弁です。これが肥厚などにより完全に閉鎖しなくなるために、左心室から大動脈に押し出されるべき血液の一部が、再び収縮期に左心房に逆流してしまう状態が僧帽弁閉鎖不全症です。
これにより、大動脈への駆出量が減ってしまいます。
そのため左心室は送りだす血液量を増やそうとして拡大し、また逆流により左心房も容量が増加して拡張するので、左心肥大となります。
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☆どんな症状?
中高齢の小型犬が咳をし始めて気付く、というのがよく見られるケースです。他に疲れやすくなったり、運動時などの呼吸困難という症状もあります。
進行すると肺に水がたまる肺水腫を起こすことがあり、命にかかわる状態ともなりえます。
☆治療はどうするの?
診断は聴診での心雑音からレントゲン、超音波、心電図検査で確定します。根本的な治療薬はなく、心臓の負担を軽くするために血管拡張薬や、心収縮を高める薬、利尿薬などを使います。日常生活では塩分を制限したり、運動させないことが必要となります。
また、トリミングは非常に負担になりますので、日ごろの状態をよく把握している病院併設のサロンなどでされることをお勧めします。
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梅雨は注意―マラセチア皮膚炎
2011-06-02 14:49:42
湿度が高くなると、ワンちゃんの皮膚トラブルが目立ちます。
原因はさまざまですが、マラセチアというカビ(真菌)の一種が増えすぎることも原因の一つとなります。
マラセチアは健康な皮膚にもいる「常在菌」ですが、何らかの理由で皮脂分泌が多くなったり(脂漏と呼ばれます)、アトピーやほかの皮膚炎などで皮膚の抵抗力が弱まると異常増殖し、皮膚炎を起こしたり、悪化させたりします。
[全部読む]特に皮脂を好むマラセチアは、わきの下や内また、指の間、耳などで増殖して炎症を起こし、かゆみなどのもとになります。
また、やはり常在菌であるブドウ球菌という細菌がこのマラセチア菌による皮膚炎の悪化に関与しているとも考えられています。
☆どんな症状?
強い赤み、かゆみを特徴とし、皮膚のべたべた感や、独特のにおいがする脂っぽいフケを伴います。
長期にわたってくると、皮膚が黒ずんだり、表面にコケが生えたようになったり、毛が抜けたりする場合があります。
☆治療はどうするの?
異常増殖したマラセチアを放っておくと、皮脂を栄養としてさらに増え続け皮膚炎が悪化します。
そこで増えすぎたマラセチアを減らすとともに、過剰に分泌された皮脂を取り除くために、薬用シャンプーなどの外用療法と、必要に応じて飲み薬の投与を行います。
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